Historical War
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辻参謀 十五対一から見える
日本軍の意外な一面

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大和タケル
十五対一 この本は昭和25年に出版された
大本営参謀の辻政信自身によるビルマ
(現マンミャー)戦線での詳報です

辻参謀はご承知のように作戦の神様という
ものから 怪物とまで酷評する者まで
近代史でこれほど評価に差のある人も珍しい

その理解のためにもなると読みましたが
陸軍の前線司令部の活動が生々しく描かれ
本当に良い内容のおもしろい本でした

最近になり 廉価版が再発行されてますが 
買ってまで読まないという人のために 
興味深かかった記述を抜き出して見ます

タイトルの15対1とはビルマ戦末期に
ほぼ国民党軍15に対して日本軍1の兵力比
だったことことからきています


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ただ断作戦などでも損失は国民党軍は
日本軍より9倍程度の戦負傷者数となっています

師団ごとの性格の違い
普通は どこの戦闘部隊でも員数と装備 
あと特殊部隊のようなエリート部隊かなど
で戦力が比較されますが この本ではむしろ
旧軍の各師団は出身地によってまったく
戦いぶりが違っています

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龍(たつ)師団 松山中将
ビルマ方面の中心戦力 九州出身
戦上手だが女好き 報告も詳しく
戦功も人一倍誇る

バモー守備隊 原大佐
東北出身部隊 朴訥で報告も
「戦果不明」を繰り返し司令部困惑
地味だが死ぬまで陣から離れない

安師団
京都出身部隊 重装備を放り出し
ほとんど見るべき戦果無く崩壊

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このように同じ軍かと驚くほど性格が違い 
まるで一人一人のキャラ設定のようです
各部隊の戦力が均一化していないのは
やりにくいでしょう

情報戦
ww2において日本軍の暗号は筒抜けで
ミッドウェー等の敗北を招いた 
これはよく目にする記述ですけど 
この本では東郷部隊という傍受専従部隊の
活躍で国民党軍の暗号をほぼ完全に解読 
ビルマでは大いに戦果を挙げたことが
描かれています

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体罰や虐待
旧軍というとすぐ「貴様っーー!!」と
怒鳴りながら殴る蹴るという体罰が
行われるシーンを良く見ます
現在の韓国軍内でも イム兵長事件などで
深刻な状況のようですが こうした描写は
まったくみられませんでした

ただ下士官級ならともかく高級将校のまわり
では みられないということかもしれません

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もっともビルマ戦末期 ピンマナの司令部が
国民党軍戦車隊の急襲を受け 陣を荒らされ
兵士らが浮き足立った際に「動く者は撃ち殺す!」
と辻自身が実際に先頭の兵士に向けて撃ったと
記述しています




兵站と補給
インパールでは牛を調達したジンギスカン作戦が
失敗したように 兵站無視とよく言われる旧軍
ですが この戦線ではかなり気が配られていたようです

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寺田自動車輜重隊が空襲を避け 夜間にのみ輸送を
行い続け ほぼ予定の兵站を遂げたようです
それにより奮戦した狼師団と共に寺田輸送隊と
暗号傍受の東郷部隊は断作戦終了後において
抜群の功績在りとの部隊感状を授けられています
ただ孤立した各守備隊への弾薬等の補給は
難しく 空輸もできない事情から各部隊の壊滅
の要因となりました

閑話休題
宮本武蔵などで国民的作家となった
吉川英治は昭和30前後 辻に資金的援助
をしていました

また名探偵金田一耕助の犬神家の一族で
犬神佐清と青沼静馬が同じ所属となった
という設定のビルマの拉猛守備隊とは
まさに辻らが指揮した第33軍麾下の
金光少佐の率いる一個大隊で小説に
ある通り奮戦の後 全滅しました

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ビルマの食料事情
南方の孤島などでは 悲惨な食料事情
だったようですが ビルマは穀倉地帯という
こともある上に川魚 蕨 イノシシ 椰子
さらに3mの大蛇を蒲焼にして珍味だった等
ほぼ現地調達ながら それなりに充実していた
ことが伺えます
また捕虜にした国民党軍兵士が中国料理番
となってすっかり部隊になじんだという
記述もあり捕虜の扱いも決して粗略なく 
それなりだったようです

慰安婦
話題の慰安婦に関する記述もありました
近年の発掘資料と同様に粗末に扱われて
いないことが書かれています

例えば 龍師団専属の慰安所は部隊後退の
際に真っ先に車で家財道具と共に後送され
別部隊の逃げきれなかった慰安婦は中国軍に
投降しました 今度は相手を中国人に変えた
わけですが その話は中国側からは絶対に
出ないでしょう 

辻から見た日本陸軍最大の敗因とは?
旧日本軍の敗因 それについては既に
大量の本や資料が出ています

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河辺正三中将
 1943/3から44/8まで ビルマ方面軍司令官

その中でも中枢にいた辻の意見は興味深いです
辻に言わせれば最大の敗因は過度の精神論でも 
近代兵器や兵站を軽んじたことでもない

それはズバリ 帝国陸軍の官僚化です
つまり江戸時代の官僚武家とまったく同じ
構図となってしまった帝国陸軍の組織は 
上に楯突けば すぐに死の待つ南方送り
やる気のある者だけが前線で死んでいく

本部勤務は黙っていれば 戦場で手柄がなくても
陸士陸大の卒業順に階級だけは上がっていく
これでどう勝てる戦を指揮できるのか?
次の言葉に その想いが要約されているでしょう

「戦争を本職とする軍人は戦争の巧拙と勇怯に
よって価値を決定する」 by 辻政信
 
最後に 辻という人物とは?
この人は本当に評価が分かれます
前線に飛び出していく勇敢な参謀という人も
いれば 牟田口より悪い軍人という人もいます
マレーの虎/山下大将は辻を「案外、小物」と評し
辻の方でも山下を「小心者」と断じていますw

もっとも 辻の華僑殺しなどと悪口を並べていた者の
一人は中国在住でシナべったりで察しはつきますが
一応 まだ自分にはまだはっきりとしませんので
辻の記述の一部を抜き出して終わりとします

(白倉少尉)「参謀殿のあだ名を
  何というか知っていますか?」
(辻)「知るもんか 教えてくれ」
(白倉少尉)「禿鷹ですよ」
(辻) これには思わず大笑いした
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